応募までの経緯
現在、治験のデータ解析の手法に関する研究を行っています。とくに、仮想の治験を実施し、新治療と対照治療の効果比を上手く推定する方法を日々探っています。
当初は、統計学分野で有名な『R』を使用していましたが、1回のシミュレーションに対する解析に少なくない時間を必要としました。最終的に10万回程度のシミュレーションを行うことを考慮した結果、Rを諦め、計算の速いFortranを使うことにしました。そして、無償版のFortranをDOS窓で動かすのに苦戦していたところ、「NAG Fortran Builder for Windows」のモニターの募集があったため、応募しました。以下、本製品を使用した感想です。
プログラミング自体に気を揉まなくて済む
Fortranでプログラミングをするにあたって、最初の壁はコンパイルでした。ソースファイルを分割しても、本製品だと1クリックで簡単にコンパイルでき、言語をスムーズに移行する一助となりました。
また、本製品の長所として、デバッグ作業が容易であり、プログラミングのストレスを軽減してくれることが挙げられます。他の有償版Fortran(英語)も試しましたが、エラー解読に予想以上に時間がかかりました。さらに、エラーに関して言えば、本製品はその検出が非常に強力です。過去様々な言語を扱いましたが、宣言された引数が未使用であることを警告されたのは初めてのことで驚きました。ソースが長くなるにつれてケアレスミスが増えがちですが、本製品を使えば安心してプログラミングに臨むことができます。
学習ツール・豊富な資料
本製品の大きな特徴として『e-book(Fortran入門書)』機能が挙げられます。プログラミングの初歩の初歩から、プログラム単位等の実践的な内容までを、解説+演習という形で収録しており、おかげでFortranを即戦力として使うことができました。
さらに実践的なことを学ぶためには、インターネット上に無数にある先人たちのソースコードを参考にすれば良く、また、日本ニューメリカルアルゴリズムズグループ様の公式HPにも有用な解説とサンプルが豊富に揃っています。私の場合、とくに、『Fortran Tip集-関数を安全に引数として渡す方法』が大変参考になりました。
その他
本製品のアクティベーション方法の1つに、USBライセンスがあります。USB1つで複数台のマシンに使い回せるため重宝しております。この活用法として、例えば、研究室で複数所持しておけば、卒業生から新しく配属される学生への引き継ぎが容易になります。他社製品だとインストール台数が制限されるため、非常に便利なライセンス形態です。
ところで、本製品を使いこなすためには、『NAG数値計算ライブラリ』を別途購入する必要があるように思います。私の場合、諸種の乱数生成等の機能が必要でしたが、学生が購入できる金額ではなく、残念ながら購入を断念しました。難しいのは十分承知しておりますが、ライブラリの分割販売等があると、学生ユーザーには親切かもしれません。
終わりに
Fortran初心者目線のレビューが中心となりましたが、『64bitアプリケーション作成』や、コンパイルに関する多くの詳細設定等、かゆい所に手が届き、上級者の方も満足できる製品です。
誰もが気軽に使うことができ、そして、プログラミングに余計な労力を割くことなく、研究活動に全力を注ぐことが可能なツールであると感じました。